2022.08.22更新『このままでは働き続けることがつらい保育の仲間たちへ』書評・感想まとめ

しんぶん赤旗8月20日付


書評掲載! ちいさいなかま社『ちいさいなかま9月号 No.728』


元白梅学園大学・短期大学学長の近藤幹生先生が本書の感想をお寄せくださいました! ぜひご覧ください。
 この本、かなり読みごたえがあります。『このままでは働き続けることがつらい保育の仲間たちへ』平松知子著、ひとなる書房、2022年6月。
 現在進行形ですが、コロナ禍の保育園の現実を直視します。「マスク越しのわらべうた」「今を生きる保育現場」「砦としての保育園」「つながろうよ、みんなで」(1ページから12ページ)。
 感染の拡大が、おさまらない中で、臨時休園せざるを得ないところが急増。だから、園長としての判断。子どもとの会話ができない、プールあそびも、行事も取りやめに。影響は、ほんとうに大きいといえます。園の保護者は、子どもたちはどうしているのか。この実情は、さまざまです。しかし、仲間たちへつながろうよという、平松園長先生のあつい心、保育の意味を、いっしょに、考えていこうという深い問題提起です。

 平松園長の40年の経験と思いが、綴られています。13ページから158ページまで。保育雑誌『ちいさいなかま』に掲載されてきた内容が、以下のような柱で編集されています。「子どもの笑顔を守りたい」「安心して働き続ける職場づくり」「親として働くおとなとして」「制度を変えるのは私たち」。
 以下は、付箋をはりながらの個人的感想の一部です。平松先生の園長論、保育論は、いつも目の前にいる子ども、親、保育者とともに、ふくらんでいきます。中味が豊かにされていきます。飛び込んできた親子に、それでどうしたのと耳を傾けていく。職員の声も。聞くだけではなく、気がつけば、なんでも言ってしまう。それぞれの人間が、育ち合う。平松先生自身も悩み、迷いながら歩いていきます。保育園は、いつでも、面倒なことがおきたりします。それを、解決していける力がある。さらに、保育園は、社会の窓という考え方も、共感できます。40年の歩みにおいて、園長を支えるスタッフ、主任、看護師、栄養士が、育ちあってきたのだと想像します。おわりの、現在の制度を変えるのも、私たちだとのことば、うれしいです。70年以上、最低基準として、変わらないできたが、―最適基準をつくろう―というメッセージです。私が大学在職中、地方の研修で同席させていただいたことがあります。そんなときも、今朝来るとき、こんなことがありました。そして、問題の核心にせまる。すごいなあ、いつも安心できる。平松先生、園長職40年、本当に、ごくろうさまでした。

 てい談給食室カウンターの冒険、158ページから205ページ。
 柱として、「食の場面から見えてきたこと」「失敗したくないの呪縛」「関わりの多様性をつくりだす保育園」。
 川田学先生、平松和子先生、藤原辰史先生、栄養士の方がメンバーです。
 読みごたえがある本としたのは、このメンバーによる議論で、本書が締めくくられているからでした。
―パンデミックの二年、現場で起きたことから考えるこれからの社会と保育も―もテーマに掲げています。
 川田先生が進行役。子どもたちにとって、給食やおやつが、どんなに楽しみであるかは、保育関係者にとっては、わかります。まぜごはんきらい、じゃあ白いごはんにかえようか。食べれなかったら残していいよ、子どもに寄り添うことを大事にしてきた。カウンターが大渋滞になってしまった。園長と給食スタッフとの意見の相違。コロナ以前からの議論でもあったらしい。でも、寄り添いすぎということはないのか。
 藤原先生は、食べ物の可能性として教育可能性と楽しく食べるケアについて、自身の思考を鍛えるなどとします。保育関係者の認識として、給食やおやつのプラスマイナスがあるのだと、きづかされます。
 川田先生は、寄り添い、寄り添いすぎということについて、関係性をひもといていく必要性を述べています。食べることだけではなく、子どもが失敗したくない呪縛のところでも、保育者の側の見方の狭さをつきつけられます。おわりの、関わりの多様性をつくりだす保育園は、やりたい保育をすすめていくことがでてきます。藤原先生は、給食の歴史を書いていますが、議論は広く深い。川田先生はコロナ以前、議論した経験がありますが、保育実践や現場をいつも励まされている発達心理学者です。この議論に参加できたらと思いました。

最後に。
 子どもを通して親の仕事、暮らしを見つめていくことが、大袈裟ではない、保育の本質だと思います。
 また、保育者側からみると、オムツを変えるという小さな実践が、日本社会自体を支えているといえます。預けてすぐに満員電車にのる保護者のことを見て痛感します。親の労働時間軽減が大事。保育では、失敗をかさね、弱さも認めあい保育は創造されていきます。これからの保育のあり方は、試行錯誤をかさね、思考停止には注意したい。保育は、規格品をつくる営みではなく、一人ひとりの人間形成のあり方を追究していく自由な保育であることです。一つひとつの園が、学びながら、自由な保育を。感染対応への取り組みを、しつつも、どのような保育であるのか、考えあいたい本書でした。感謝します。
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